ゴールドマン・サックス銀行のマーカスとは
2016年からゴールドマン・サックスは個人向けの銀行をアメリカで展開し、投資銀行に代わる新たな業態として力を入れています。そんなゴールドマン・サックス銀行のサービスを詳しく解説します。
目次
ゴールドマン・サックス銀行とは?
まずはゴールドマン・サックスの銀行について大まかに解説します。
力を入れる個人向けサービス
ゴールドマン・サックスといえば、資金を株や債券などで運用する「投資銀行」として知られる金融グループです。従来は大口の投資家や、超が付くような富裕層を顧客としてきました(資産10億円以下は門前払いとも)
ですが2016年からは、オンラインサービスをメインとするインターネット銀行である「ゴールドマン・サックス銀行」を設立し、そこで中所得層をターゲットとして金融サービス「マーカス」を提供しています。
これまで全く相手にしてこなかった層をターゲットとして設定し、これまでに無かった金融サービスをオンラインで提供することでアメリカでは参入からわずか2年で40億ドル(約4530億円)を融資するまでに急成長を遂げています。
日本にも導入へ
現在はアメリカで展開しているサービスですが、日本でも同様のサービスを展開する方針であることが明らかとなっています。
日本経済新聞が報じたところによれば、ゴールドマン・サックス日本法人の持田社長が、日本で消費者を対象とした銀行業に参入する意向を表明したとされています。米国で成功をおさめた「マーカス」を日本にも導入する見通しだそうです。
具体的なサービス開始のめどは明らかにされていませんが、日本で銀行の免許を取得する方針だそうです。
どんなメリットがあるの?
ゴールドマン・サックス銀行の「マーカス」にはどんなメリットがあるのか。先行するアメリカでの事例をもとに解説します。
高金利の預金サービス
マーカスのメリットとして、高金利の預金サービスがあります。
例えば米国では年利2.05%と、米国の大手50行の平均の「4倍」の利率で預金を集めています。 旧来の銀行が持つ古い勘定システムや店舗網などの負の遺産を持たないため、運営コストを低く抑えることができ、それが高金利を実現する要因となっています。
米国では預金量が300億ドル(約3.3兆円)を突破し、急拡大しています。
ただし、日本では長年にわたり超低金利政策が取られており、その中で「高金利」を打ち出しても顧客にとってそれが大きなメリットと言えるほどの効果を挙げられるのか、という点にはやや不安も残ります。
個人向け融資ローン
多くの預金を集める一方、個人向けの融資やローンにも力を入れています。
近年米国で深刻化していた「クレジットカード負債」を軽減する、ということをコンセプトのもと提供されているサービスです。
クレジットカードの利用は高金利の借金を抱える原因ともなっています。日本では金利負担が無い一括払いが主流ですが、米国などでは金利が発生する支払い方法の利用が多く、それがしばしば問題となっています。
マーカスの個人向けローンは複雑で分かりづらい手数料をゼロとし、また3〜6年のローンを固定金利で提供し、個人向け融資の透明化を図っています。
例えば日本でも住宅ローンでは数万円の融資手数料をはじめ、あれこれ理由をつけて融資額の2%程度の「手数料」が発生するケースが多いです。マーカスはそうした不透明な手数料を一切排除し、借り主は固定金利の利払いに専念できます。
高金利の預金サービスとセットで「返済して貯める」スタイルを提案しています。
新たなサービスにも期待
ゴールドマン・サックスグループでは個人向けの資産管理アプリを手がけるクラリティーマネーの買収や、クレジットカード事業でAppleと提携するなど、新たな事業領域の開発にも力を入れています。
米国ではアマゾンやグーグルなどのIT大手も個人向けの金融サービスの開発に取り組んでおり、そうした競争の中で日本の消費者にも便利なサービスを提供することを期待したいです。
デメリットは?
続いて、「マーカス」のデメリットの部分を紹介します。
既存銀行よりサービス面で劣る部分も
既存の銀行と比べて、サービス面で劣る部分もありそうです。
例えば既に参入から2年が経つ米国では、デビットカードを発行していません。また、驚いたことにキャッシュカードもありません。
マーカスの口座にお金を出し入れするには、他の銀行の口座から送金するか、あるいは小切手をゴールドマン・サックス銀行のセンターに郵送するなどの方法が用意されています。
日本はコンビニATMなどのインフラが充実しているため、日本に参入する際のサービス内容は米国と違ったものになるかもしれませんが、極限までコストを削減するならば米国と同じ方式を取る可能性もありそうです。